10℃も差が出る!? INTEL X99マザーで電源回路(VRM)をチェックしてみた

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Intel X99 Expressチップセットを搭載したLGA2011-v3マザーボードは、ハイエンドプラットフォーム向け製品らしく、下位グレードの製品でも高品質なコンポーネントを使用しており、上位モデルになるにつれ、インターフェース等が充実する傾向にある。では、各マザーボードが備えるインターフェースの違いだけでマザーボードを選んで良いのだろうか?

今回は、ASUS X99-Aと、その上位グレードにあたるASUS X99-DELUXEを用意。CPUへの電源供給を担うVRM(Voltage Regulator Module)、いわゆる電源回路の違いにフォーカスして、両製品が採用するコンポーネントの違いをチェックしてみたい。

 

ASUS X99-DELUXE

ASUS X99-DELUXE

ASUS X99-A

ASUS X99-A

同じフェーズ数だが、部品構成が異なる2枚

CPUへの電源供給を担うVRMは、CPUの安定した動作を実現する上で重要な役割を担っている。特に、通常以上に電力を消費するオーバークロック動作を狙う際は、VRMの品質が安定動作、そして安全に動作させられる限界を左右することになる。

CPUソケットの両サイドにメモリスロットが配置されるLGA2011-v3の場合、下位のLGA1150よりもVRMが実装できる面積は限られている。それでいて、より消費電力の大きなCPUに対応する必要があるのだから、LGA2011-v3対応マザーボードのVRMに採用されるコンポーネントのクオリティは極めて重要だ。

それでは、今回用意したX99-AとX99-DELUXEのVRMをチェックしてみよう。

まずはX99-Aだ。X99-Aが備えるVRMは、ASUSが「DIGI+ VRM」と呼称するフェーズのデジタルPWM電源で、MOSFETにはOn Semiconductorの「4C85N」、PWMコントローラは「ASP1257」と刻印されたチップを採用。VRMの冷却には専用のヒートシンクを備えている。

ASUS X99-AのVRM

ASUS X99-AのVRM

デジタルPWMコントローラ「ASP1257」

デジタルPWMコントローラ「ASP1257」

On SemiconductorのMOSFET「4C85N」

On SemiconductorのMOSFET「4C85N」

裏面には熱伝導シートが貼りつけられている。

裏面には熱伝導シートが貼りつけられている。

VRM冷却用ヒートシンク

VRM冷却用ヒートシンク

続いてX99-DELUXEのVRMを見てみよう。こちらもASUSが「DIGI+ VRM」と呼称するデジタルPWM電源で、フェーズ数はX99-Aと同じ8フェーズ。

MOSFETには、優れた電力効率で評価の高いInternational Rectifier(IR)社のドライバ内蔵MOSFET「IR3550」を採用している。PWMコントローラはX99-Aと同じく「ASP1275」と刻印されているが、ASP1257以降の刻印が異なっており、恐らく仕様が異なっていると思われる。

また、VRM冷却用のヒートシンクは、IOパネル側に配置された別のヒートシンクと、ヒートパイプによって接続された。これにより、冷却ユニットとしての熱容量はX99-Aより大きく、放熱面積も広くなっている。

ASUS X99-DELUXEのVRM

ASUS X99-DELUXEのVRM

IR社のDriver MOSFET 「IR3550」

IR社のDriver MOSFET 「IR3550」

デジタルPWMコントローラ「ASP1257」

デジタルPWMコントローラ「ASP1257」

 

ASUS X99-DELUXEのVRM用ヒートシンク

ASUS X99-DELUXEのVRM用ヒートシンク

バックパネル側のヒートシンクは実装部品に接地しておらず、2つともVRM専用のヒートシンクと言える。

バックパネル側のヒートシンクは実装部品に接地しておらず、2つともVRM専用のヒートシンクと言える。

両製品の動作温度をチェック

同じ「8フェーズのデジタル電源」でありながら、使用されているパーツが異なるX99-AとX99-DELUXE。この違いがどのような影響を及ぼすのかテストしてみよう。テストでは、ヒートシンクに温度センサーを貼り付け、Windows上でPrime 95 Small FFTsを実行。CPUに高負荷をかけた際のVRM温度を測定した。

なお、CPUは6コア12スレッドCPU Intel Core i7-5930Kを搭載。CPUクーラーには、VRMへの影響が少ないオールインワン水冷ユニット「サイズ APSALUS3-120」を使用した。室温約26℃の環境下で、VRMに風が当たらないよう離しておいた状態で測定している。

温度センサーはヒートシンクの端に取り付けた。

温度センサーはヒートシンクの端に取り付けた。

温度測定に用いたデジタル温度計TENMARS TM-363

温度測定に用いたデジタル温度計TENMARS TM-363

 

室温26℃で測定。

室温26℃で測定。

テストの結果、同じCPUを同じように動かしているにも関わらず、両製品のVRM用ヒートシンクの温度には、30分で10℃近い温度差がついた。

VRM用ヒートシンクの違いによる冷却能力の差ももちろんだが、VRMによる電圧変換の際に生じた損失は熱として放出される。電力効率の高さで評価の高いIR社のMOSFETを採用していることも、ASUS X99-DELUXEの温度が低く保たれた理由であると考えられえる。

長期に渡って使うならこだわりたいマザーボードの質

はじめに述べたとおり、CPUへの電力供給を担うVRMのクオリティは、マザーボード上のコンポーネントの中でも特に重要なものだ。また、多くの電子部品にとって、高い動作温度は寿命を縮める大きな要因となる。より低い動作温度で電力供給が可能なVRMを搭載していることは、ASUS X99-DELUXEの魅力であると言える。

ハイエンドクラスの製品ですら、これだけはっきりと差がつくなら、より廉価なLGA1150マザーボードなどでは、上位グレードと下位グレードの差も、より顕著なものになるだろう。

より長く使うことを考えるなら、利用できる機能が必要十分であることに加え、使用されているコンポーネントのクオリティに注目して、質の高いマザーボードを選んでみてはいかがだろうか。


<機材協力> ASUS JAPAN株式会社

 

製品情報

ASUS X99-A http://www.asus.com/jp/Motherboards/X99A/overview/
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ASUS X99-DELUXE http://www.asus.com/jp/Motherboards/X99DELUXE/overview/
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